がんちむの備考帳

身近なことを一生懸命考えると、どうでもいいことがどうでもよくなくなったり、どうでもよくないことがどうでもよくなったりします。

不安の中の若者たち

しばらく前のことだが、NHKEテレで、「白熱教室」という番組を見ていた。



海外の一流大学の講師が、毎回違ったテーマで講義をする様子を撮影した教養番組なのだが、私がそのとき見ていたのは、「ソウル白熱教室」というシリーズの一つで、韓国の最高学府であるソウル大学で消費者学科を担当しているキム・ナンド教授の講義だった。


私がそのとき見たのは、全4回のうちの2回目で、「人生で一番楽しいことは?」というタイトルがついていた。


聴講していたのは20代から30代がほとんどで、未来に希望が持てずに不安の中でもがいている若者たちだった。


私がこの番組にチャンネルを合わせたのはたまたまだったが、気が付けば食い入るようにテレビ画面を見ていた。


なぜなら、私もまた、未来に対して強烈な不安を抱いている若者の一人だからだ。


就職、出世、夢・・・


現実と不安に押しつぶされそうになる自分と向き合いながら日々を生きている若者にとって、キム教授の話は心に強く訴えかけるものがある。


韓国は日本以上の超競争社会だ。若者たちが抱く不安も日本以上かもしれない。


国は違えど、隣国の若者たちも自分たち日本の若者と同じ悩みを抱えていることを知り、私はキム教授の話に聞き入った。


数日後、私は書店にいた。キム教授の書いた本が、日本語版として発売されているのを知ったからだ。


私は彼の著書であるエッセイ「つらいから青春だ」を買って読んでみた。


ずいぶんと励まされた。


今を生きる若者たちに向けたメッセージに強く心打たれたのだ。


本の中に、「きみという花が咲く季節」という項目があった。


簡単に言うと、梅や桜、ヒマワリ、菊といった花は、季節ごとにそれぞれ美しく咲き誇るのに、人はみな、どうして早春に咲く梅にばかりなろうとするのか、というものだ。


確かにそう思う。友人や同僚が自分よりも早く成果を上げているのを見ると、ついつい焦ってしまうのが人情というものだ。もちろん私も例外ではない。


私という花はいつになったら咲くのだろうか。そもそもちゃんと咲くのだろうか。
そんなことを考える。


30代、40代、50代になった自分を想像してみる。しかしそれは、なかなか難しい行為であって、うまくいかなかった。


私にもささやかな夢はあるし、そうであればいいなと思う未来もある。だがそれがいつの出来事になるのか、まったくもって想像がつかないのだ。


そのとき、まだ私の頭には髪の毛がちゃんとあるのだろうか。


そんなことのほうがリアルに想像できてしまう。まだまだ私には未来を強く夢見るという力が足りないのかもしれないと、妙に残念な気持ちにもなる。


ただ、もし私という花があるのなら、花の大きさに関わらず、いつか目一杯咲かせてみたいとは思う。


それがいつなのかはわからないが、その季節を待ちながら、毎日を大切に生きようと、そんなことを思った。